一般に、おせち料理は四角形の重箱に詰められることが多いです。
その理由を詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。この記事では、なぜおせち料理を重箱に詰めるのか、そしてどのような料理が詰められるかについて解説します。
おせち料理が重箱に詰められるようになった背景
おせち料理が重箱で提供されるようになったのは、おそらく明治時代以降のことです。
おせちの起源には複数の説がありますが、一般的には弥生時代にさかのぼるとされ、文化として奈良時代に確立したと考えられています。
宮中の節日や公式行事である節会の際に振る舞われた料理がその起源であるとされます。
平安時代には、節会のご馳走を「御節供(おせちく)」と称し、それが江戸時代になると一般庶民の間に広まっていきました。
お重でおせち料理を詰めることには特別な意味があります。
重箱に縁起の良い食材を詰めることで「幸福や祝福を重ねる」という願いが込められています。
この考え方に基づき、お重に料理を詰める習慣が生まれ、お正月に重箱に詰められたおせち料理を食べる風習がより意味深いものとなります。
伝統的なおせち料理は五段重
伝統的なおせち料理では、五段の重箱が用いられます。
このうちの最上段、つまり五段目は空の状態で残し「神様からの恵みを受け取る場」として特別な意味を持たせています。
そのため、おせち料理は一段目から四段目までに配置されます。
「四」という数字は偶数であり、日本の文化では奇数の方が縁起が良いとされることから「三」という縁起の良い数字にもう一段を加えることで吉祥を願う意味が込められています。
四は、死という意味を連想させるために四段重は、与段重と呼ぶところもあるようです。
また、すべての料理を一箱に詰め込む一段重もあります。
市販されるおせちの一段重は、伝統的な意味を重んじつつ、現代の食文化や利便性を取り入れた形で提供されています。
市販のおせち : 六段重や七段重に意味はあるの?
最近は、おせちの通販ショップで「六の重」と「七の重」と多段重のおせちが販売されています。
前にも書きましたが伝統的なおせち料理では、通常「五の重」までとされています。日本のおせち料理において、一の重から五の重までが一般的であり、それぞれの重には特定の意味合いやテーマがあります。
- 一の重: 祝い事や長寿を願う食材が含まれる。
- 二の重: 海の幸が中心で、豊漁や繁栄を願う。
- 三の重: 山の幸が中心で、豊穣や安定を願う。
- 四の重: 吉兆や縁起物を含む。
- 五の重: 空箱、もしくは甘味やデザートなど。
伝統的なおせち料理には「六の重」や「七の重」は存在せず、これらは現代のおせち料理の中で新たに考案されたものか、あるいは特定の地域や家庭に特有の習慣である可能性があります。
もし特定の地域や家庭で独自に「六の重」「七の重」が用意されている場合、それはその家庭や地域独自の伝統や創作に基づいている可能性が高いです。そのため、具体的な内容や意味については、その家庭や地域に独自のものと考えられます。
また、現代ではあまりこの慣習に囚われずに自由に食材を配置したおせちが多いのも特徴です。
「中華おせち」や「肉おせち」は最たるものと言えるでしょう。
おせちの各重箱の意味と詰める料理
ここでは、おせち料理の「一の重」から「五の重」に詰める具体的な品目を全てリストアップしました。
ただし、おせち料理には地域や家庭によって異なる伝統や好みがあるため、ここで挙げるリストは一般的なものの一例となります。
また、現代ではすべての重を用意する家庭は減っているため、これらは伝統的な形式に基づいたものです。
一の重(祝いの重)
- 黒豆(健康と労働の象徴)
- 数の子(子孫繁栄)
- 伊達巻(知恵と文化の象徴)
- 田作り(五穀豊穣)
- 紅白かまぼこ(祝いの象徴)
- くわい(地に足をつける象徴)
- たたきごぼう(安定と根気)
二の重(繁栄の重)
- 海老(長寿)
- 煮しめ(野菜や海産物の煮物)
- 栗きんとん(金運上昇)
- にしんの子持ち(子孫繁栄)
- たこの旨煮(商売繁盛)
- 松前漬け(家族の和)
三の重(豊穣の重)
- 栗きんとん(金運上昇)
- ごぼう(家族の健康)
- 金時人参の甘煮(金運)
- こんにゃくの煮物(健康)
- ふきの煮物(苦労知らず)
- 里芋の煮物(家族の絆)
四の重(吉兆の重)
- 田作り(五穀豊穣)
- かまぼこ(日の出を象徴)
- くわい(地に足をつける象徴)
- ぶりの照り焼き(商売繁盛)
- 鶏の照り焼き(家庭の平和)
- 鯛の塩焼き(めでたい)
五の重(甘味の重)
- 柚子(邪気払い)
- 白玉団子(家族の絆)
- 果物(豊かな収穫)
- あんころ餅(甘い人生)
- 水まんじゅう(清らかな心)
- 金柑の甘露煮(金運)
このリストはあくまで一般的な例で、実際にはそれぞれの家庭や地域の伝統や好みにより内容が異なることが一般的です。
市販されているおせちは、伝統的な意味を重んじつつ、現代の食文化や利便性を取り入れた形で提供されています。
それぞれの料理には、新年を祝う特別な願いや意味が込められています。