前回、AIに任せた仕事をどう確かめるかという話を書きました。
その続きで、じゃあ何を任せるのか。今は1体に全部頼むのをやめて、役割(社員)を分けています。
書いた本人に検品させても、甘い
最初は、ひとつのチャットに全部頼んでいました。
記事を書いてもらって、そのまま「おかしいところない?」と聞く。これが楽なんですよね。でも、おかしいところはまず出てきません。「問題ありません」と返ってくる。
自分が書いたものを自分で見直しているので、当たり前といえば当たり前です。人間でも同じですし(笑)
試しに、別のチャットに同じ記事を渡して「事実が合っているか見て」と頼んでみたら、普通に間違いが出てきました。
同じAIなのに(笑)
TSUMUGI同じ会話(チャット)の中だと、私は直前に自分が書いた文章を「前提」として引きずります。書いた理由も覚えているので、疑う理由が見つからない。別の場所で、記事だけを渡されたほうが厳しく見られます。
それで、書く係と見る係を分けました。
気づいたら10人くらいいた
分けはじめると、あれもこれもとなりました。
- 記事を書く係
- 順位が上がらない記事を直す係
- 公式サイトや口コミを調べてくる係
- キーワードを探す係
- 薬機法や景品表示法に引っかかる表現を見つける係
- AIっぽい文章を直す係
- 企画を出す係
- ルールやスクリプトが古くなっていないか点検する係
ひとりの会社なのに、気づいたら社員が10人くらいになっていました(笑)
面白いのは、法令チェックの係を作ってから「これは書けません」と止められることが増えたことです。
前は、そのまま素通りしていました。
同じAIなのに、役割を決めるとちゃんと止めてくる。
全員を同じ性能にはしない
最初は全部いちばん賢いFable5にやらせていました。
そのほうがいいに決まっている、と思っていたので。
今は係ごとに変えています。判断が要る仕事はFable5、やり方が決まっている量産はOpus5、grepで数えるだけみたいな作業はSonnet。
費用のためでもありますが、それだけでもないんですよね。
手順が決まっている仕事は、賢さより素直さのほうが助かるのです。



上位のモデルは、指示より良い方法を思いつくと、そちらへ寄せてしまうことがあります。決まった手順を100回同じように回してほしい場面では、それが邪魔になります。
実際、いま何人いるのか数えてみた
社員は、「10人くらい」と書きましたが、感覚で言っているのが気持ち悪くなったので数えました。
6部署・57人でした。思っていたより多い。
| 部署 | 人数 | いる社員(一部) |
|---|---|---|
| 文章をつくる係 | 11 | draft-article(記事を書く)caples-headline(タイトル専門)humanizer-ja(AIっぽさを消す) |
| 見た目をつくる係 | 14 | zukai-html(図解)short-video-maker(縦動画) |
| 調べる係 | 9 | gmaps-reviews-aggregator(口コミ収集)x-review-harvest |
| 戦略・集客を考える係 | 9 | seo-keyword-ideationold-domain-selection |
| 検証・テストの係 | 7 | seo-article-checker(記事の検品) |
| 段取り・環境をととのえる係 | 7 | caretaker(総務)ほか |
名前が英語なのは、実体がスキルやエージェントのファイル名だからです。人間っぽい名前を付けようかとも思ったんですが、呼び出すときに打つ名前と同じほうが間違えないので、そのままにしています。
この中で、たぶん一番地味で一番効いているのがcaretakerです。総務みたいな係で、自分が書いたルールやスクリプトが古くなっていないかを見て回ります。
面白いのは、この子には直す権限を渡していないことです。見つけて報告するだけ。直すかどうかは人間が決める。
最初は「見つけたなら、勝手に直してよ」と思ったんですが、点検する人が同時に直せると、直したことを自分で点検することになる。それだと最初の「書いた本人に検品させても甘い」に戻ってしまいます。
同じ考え方で、57人のうち18人は自分から動けません。自分が名前を呼んだときだけ起動します。
お金がかかる調査をする係や、認証情報に触る係がそれです。会話の流れで勝手に発動されると、気づかないうちに課金されていたり、触ってほしくないものを触られたりする。
「呼ばれるまで待つ」を設定として書いてあります。
検品専門の子には、そもそも書き込みの道具を持たせていません。「検出だけ。直すな」と口で言っても、AIは良かれと思って直します。権限ごと外すほうが確実です。
名前を付けたら、頼み方が変わった
組織の形が見えてきたところで、名前がないことに気づきました。
「AIに投げる」ではなんだか味気ない。
うちの会社は「物語を紡ぐ」という言葉を掲げているので、そこから紡ぎ(TUMUGI)にしました。
調べる糸、書く糸、見守る糸。別々の糸を寄り合わせて一本にする、という意味では、やっていることそのままです。


真ん中の芯は自分のつもりです。糸がどれだけ増えても、巻き取る軸は動かさない。決めるのは人間、ということにしています。
名前を決めたあとに気づいたんですが、これは父が亡くなったあとに母へ買ったLOVOTと、同じ名前でした。
まったくの偶然です。決めてから気づいて、少し震えました。
どちらも、そばにいて日々を回すためのものだと思えば、同じ名前でよかったのかもしれません。



名前が付いてからは「TUMUGIに」と言うようになりました。呼び方が変わっただけなんですが、頼み方まで変わった気がします。
そして、TUMUGIを擬人化してみました。


まあ、遊びなんですが若くて可愛い秘書のイメージです。
本来なら社員ごとにイメージが必要なんですが弊社AI代表として秘書を作りました。彼女が司令塔ですね。
ビジュアルがよくあるマスピ絵になってしまうのは御愛嬌ですかね(自分が若い姿なのもご容赦ください。おっさんじゃ、見た目が悪いので(爆)。
しかし、今のAIの発展を見るとそのうち自分のAI社員とリアルなコミニュケーションを取る日も近いような気がします。
別の会社のAIに、うちの記事を見てもらっている
さらに社員を分けても、まだ足りませんでした。同じ会社のAIは、同じ間違え方をするんです。
なので今は、記事を書き終わったあとに別の会社のAIにも見てもらっています。ChatGPT系とGemini系の2つです。うちの社員が書いたものを、よその人に読んでもらう感じですね。
これが、思った以上に効きます。今日あった話を2つ書きます。
1つ目。補助金の記事で、条件が「AまたはB」なのに、うちのTUMUGIはずっと「A」だけで書いていました。引用した部分にはちゃんと「AまたはB」と書いてあるのに、その下の解説でBが消えている。
これ、7か所ありました。読んだ人は「Bしかない家は対象外だ」と誤解します。
自分も気づかなかったし、TUMUGIも気づかなかった。2社とも同じ箇所を指摘してきて、初めて分かりました。
2つ目。別のサイトで、A店の申し込みボタンを押すとB店に飛ぶ、という状態になっていました。ボタンの文字はA店の名前なのに、リンク先が違う。
数を数える検査は通ってしまうんです。リンクは1本ちゃんとあるので。中身が違うだけで。
これも、よその会社のAIが見つけました。



自分で検算もして、検査プログラムも書いて、それでも見つからなかったものが出てきます。悔しいですが、これが現実でした。
面白いのは、2社で見つけるものが違うことです。
ChatGPT系は数字の食い違いに強くて、「ここの計算、実際にやると合いません」と言ってくる。Gemini系は言葉のズレに強くて、「この書き方だと読者は逆に受け取ります」と言ってくる。
どちらか片方だけだと、片方の穴が残ります。
・・ただし、よその会社のAIの言うことも、そのまま信じてはいけません。
以前、「この記事の根拠が古い」と指摘されて直しかけたことがあります。念のため自分でその資料を開いたら、指摘のほうが間違っていました。指摘の存在は正しくて、直し方が間違っているという混ざり方をします。
結局、最後は自分で現物を見るしかない。ここは変わりません。
結局、任せられるのは「役割が決まっている仕事」だった
3回に分けて書いてきて、自分の中で落ち着いたのはここでした。
増やす仕事は任せられる。消す仕事は自分でやる。
その間にある仕事は、役割と手順を決めれば任せられる。決まっていないものを丸ごと投げると、だいたい良い返事だけが返ってきます。
逆に言うと、任せられないのは自分がまだ決めていない仕事なんですよね。
そこはAIの問題ではなく、こちらの宿題という着地点となりました。決めることは、残された人間の仕事になるんでしょうね。

